ディスプレイを自作する②3Dプリンタで筐体を作る

はじめに

以前の記事で、使わなくなったノートPCをバラし、
LCDコントローラを繋いで外付けディスプレイにしてみました

ディスプレイを自作する①とりあえず動くところまで
使わなくなったノートパソコン(VAIO(VPCCA3AJ))の液晶(型番:CLAA140WB01A)部分を取り外し、LCDコントローラと接続して外部ディスプレイとして使えるように改造しました。液晶周りやカバー(蓋)の分解方法も一緒に手順としてまとめてみました。

ただ、やっぱり基盤むき出しでカッコ悪かったので
今度は筐体を作って完成させる話です

前回のおさらい

前の記事で、ジャンクのノートPCから画面の部分(フタの部分まるごと)を取り外し、
外に基盤とボタン基盤を接続し、100均のタブレットスタンドで立てていました

もちろんこれでも全然使えるんですが、基盤がむき出しで格好つかないし、
場所も取るし、気軽に動かすこともできません

ということで、今回は筐体の部分を3Dプリンタで作る話です

筐体の設計

設計思想を固める

わりと大物を設計することになるので、ちゃんと設計思想を固めておきます
この思想に従って、設計を始めます

  • ついたままのヒンジを活用し、画面の傾きを変えられる
  • ある程度の強度があり、適当に持ったくらいでは破損しない
  • ボタンを前面に配置する(使い勝手を考えて)
  • 持ち運び等も考慮し、できるだけ小さくする(特に前面)
  • こだわりすぎない(3Dプリンタで大物を作るのは初なので…)

大まかな形を考える

ほんとは、この工程があります
モデリング前に雑なスケッチをすることが多いですね
ただ今回は自分の頭の中で考えてしまったので特にスケッチもなし…笑

モデリング

大まかな形状を考えた後、モデリングをします
私は商用利用しているわけではないので、Fusion360を使っています

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非商用利用の限定になりますが、機能が充実しており、
非常に便利な3DCADです
(あれ、前から3年限定ライセンスだったっけ…?無料で更新できるの?)

前面カバーの設計

長手(ディスプレイ横方向)全部は3Dプリンタのサイズを超えているので、
左右で二分割することにしました(前側右カバー、前側左カバーということにします)
※青と黄色のモデルです

前側カバーはできるだけ前に突き出ないように、
ボタンの基盤がギリギリ入るくらいのサイズにしています
左カバー近くをディスプレイとの束線が通るので、右カバー側にボタンを配置しています
基盤のボタンの上に、3Dプリンタ部品のボタンが乗っている感じです
(このあたりの設計をしたことがなかったので、なんとなく電化製品とかを参考にした)

長手でボタン上で断面を切るとこんな感じです

また、ディスプレイのヒンジ部分を前側カバーに固定するんですが、
長手で同一部品に固定したかったので、3Dプリンタではなく、
プラ板を切って穴をあけてヒンジを固定し(ヒンジホルダー)、
そのプラ板を前側カバーに固定することにしました
ただ、これは失敗で、今考えると3Dプリンタ部品に直接固定すればよかったです…(失敗談は後でまとめる)

後側カバーの設計


後カバーの役割は、LCDコントローラを固定・カバーすること、
及びディスプレイ自体の転倒防止です
こちらも長手が大きいため、左右で分割します
LCDコントローラはざっくり測定し、
4か所をビスで固定する形にしています
また、ディスプレイの可動範囲をざっくり計算し、
転倒しないような奥行きのサイズを決めました
あとは、ディスプレイ側と干渉しないように、なんとなーく面をつなぎます

また、前側カバー側に固定する形にしました
ここも反省点がありますがそれは後で書きます…

また、束線(液晶パネルとボタン基盤につながっている束になっている線のこと)をカバーの表側から裏側に通すため、
そのための穴をざっくりと開けておきます(外からはあまり見えないので大きめに…)

裏面カバーの設計

1つの部品で裏面を全て覆いたかったため、
ここもプラ板を切り出して作ることにしました
(正直これも失敗…ふりかえりに書く)

モデル完成

最終的に、こんな感じになりました
見た目上は、まあ良さそう…?デザインセンスはなんとも言えないけど笑

一応モデルのリンクも公開します
https://a360.co/41P9QbU

部品・構成(アセンブリ)としては、以下になりました
実際の部品は太字で示しています
※「アセンブリ」は「フォルダ」のようなものだと思ってください
 アセンブリを意識して設計すると、組立てが楽です

  • 液晶パネルアセンブリ
    • 液晶パネルフレーム(流用部品)
    • ヒンジホルダー(プラ板から手加工)
  • 前側カバーアセンブリ
    • 前側左カバー(3Dプリント)
    • 前側右カバーアセンブリ
      • 前側右カバー(3Dプリント)
      • ボタン基盤(購入部品)
      • ボタン x6(3Dプリント)
  • 後側カバーアセンブリ
    • 後側左カバー(3Dプリント)
    • 後側右カバー(3Dプリント)
    • LCDコントローラ基盤(購入部品)
  • 背面カバー(プラ板から手加工)

部品の準備

3Dプリンタで造形

それぞれの部品(前側左右カバー、後側左右カバー、ボタン)を造形します
どうもベルトが緩くなってしまったようで、円がちょっと楕円型になってしまいました(別ページに詳細を書いた)

Ender3で円が楕円になってしまう時の対処法
3DプリンタのEnder3を使っているんですが、最近、円柱や穴が歪む(楕円形になる)現象が発生していました。その時の対処法をまとめています。

造形にそこそこ時間(後カバーが12hくらい)かかったのと、
後側カバーのサポート材をとるのがとても大変でした。。

また、サポートを「ツリー」にするときれいに造形できなかったため、
サポート材の造形方法は「標準」を選んだ方がよさそうでした
(サポート材をとるのが大変になりますが…)

表面性の改善

3Dプリンタで出力するとどうしても積層面のガタガタが目立ち、
最下層になっていた面は見た目が汚くなってしまいます
もうちょっとマシにならないかな?ということで、紙やすりでやすってみました
ただどれだけ紙やすりで頑張っても、特に積層方向のガタガタは取れず…
本気でやるなら、パテで一回埋めてからやすった方がよさそうです(その上で塗装する)

今回はある程度で諦めました笑
結局こんな感じに(わかりにくい…)

プラ板から作る部品の準備

これが意外と面倒だった…
プラ版は1mmのPS(ポリスチレン)の板を買い、
実物に合わせて適当に切りました(図面も引かず)
この切る作業と穴をあける作業が思ったより面倒で、
やっぱり全部3Dプリンタで作る方針にすればよかったと…(反省は後述)

組立

前準備

組み立て前の準備として、組み立てやすくするために、
まず前カバー・後ろカバー同士は接着剤で固定しておきます

また、前カバーと液晶パネル枠(ノートPCの部品、以下「液晶パネルフレーム」とする)の一部が干渉していたので、
この辺りはニッパーとやすりで少し凹部を広げることに

クリアランスを十分に開けていたにも関わらず干渉したので、
3Dプリンタの精度の問題というより、おそらくカバー部の測定ミスかモデリングのミスだと思います

さらに、ビス穴はあらかじめビスを締めて、ねじ穴を作っておきます
(ねじを締めるのがかなり固いことが分かっていたので、組みやすくするためです)
しかしかなり固い!上に、折れたところもある…(反省は後述)
写真撮ってなかったのでモデルで
赤丸のようなボスが折れる…

アセンブリの組立

液晶パネルアセンブリ

まず、液晶パネルフレームと、ヒンジホルダーを組立てます
ヒンジホルダーはただの穴なので、ビスとナットを使って固定します

前側右カバーアセンブリ

前側右カバーと、ボタン基盤、ボタンを組み立てます

ちょっと精度が出てなかったのか、そのまま組み付けるとボタンが押されっぱなしになってしまったので、
間にワッシャーをかませて少しクリアランスを確保しました

基盤のLEDが点灯しているかわからない状態になってしまったので、
後から穴をあけました笑

ボタンはいい感じに押せてます

前側カバーアセンブリ

前側左カバーと、前側右カバーアセンブリを組立てます
ただビスで固定するだけ…
後ろカバーアセンブリも含めてビスで固定するところはまだビスで止めていません

後側カバーアセンブリ

今度は、後側左カバー・後側右カバーと、LCDコントローラ基盤を組立てます
ビスで4点を固定するだけです
うーん、カバー同士を基盤で繋いだ形になってしまったので、
基盤に負荷(力学的な)がかからないかが心配…

最終的な組立て

前側カバーアセンブリと、後側カバーアセンブリを組付けます
とはいえ、ビスで固定するだけ…
(当然だが剛性がない…反省は後述)

最後に、背面カバーを取り付けます
これはとりあえず、後側カバーアセンブリにだけ固定します
本当は前側カバーアセンブリにも固定したいんですが…
(あれこれはどうするつもりだったんだっけ…?)

完成!

じゃーん!まあまあいい感じだと思います

背面から

当初の想定通り、ノートPCのヒンジを活用して、
ちゃんと角度も(それなりに)変えられます
前から見たらすっきりしています

とはいえ剛性はあまりないのでちょっと不安…
あと見た目はそれなりですね、3Dプリンタ感はかなりあります笑

ふりかえり

穴は大きめに

3Dプリンタの材質(PLA)が固く、タッピングビスが入らなかったり、ねじ穴部分を壊してしまったりしました
下穴の内径でいうと今回は2.4mm→2.6mmに変更しましたが、それでも結構固かったです
M3タッピングビスの下穴は2.8mmくらいでも良かったかもしれません

ボスの強度に気を付ける

通常、ねじ穴を設置する際はボスを立ててその中に下穴をあけておきますが、
これが折れること折れること…
3Dプリンタは積層方向に非常に弱いので、簡単にぽきっと折れてしまいます
リブ()などを干渉しない範囲でできるだけ作り、補強してあげるべきでした

組立てやすさを考える

想定通りでしたが、
3Dプリンタで精度が出ないだろうなということで、
仮組のための位置決めがあればもっと良かったです
とはいえ3Dプリンタで精度出ないだろうなと思ってたので、
あった方がいいかはやってみないとわからない…

3Dプリンタの精度が出ないことを想定する

場所によっては1mmくらいずれる?
(3Dプリンタ側の状態があまりよくない可能性もあり)
クリアランスを持たせる場合、1mmは持たせた方が良さそうです

全部3Dプリンタで作ればよかった

想像以上にPSは柔らかく、
あえて長手で同じ部品(ヒンジホルダー)にした理由が全くなかった
(2mmくらいあればそこそこ剛性があるかと思ったけど、一枚板だからなあ…)
弾性率は3Dプリンタで使っているPLAとそれほど変わらない
(PSは2300-3300MPa、PLAは3500MPaとのこと)
ので、一枚板と成型で物性が違うのかな…?

今回のモデル置き場

fusion360モデル

上の方でも紹介しましたが、このリンクから見れます
https://a360.co/41P9QbU

STLモデル

STLモデルは、以下のGithubリポジトリに置いてみました
https://github.com/ai-mecha/display_diy

きゅうこん

きゅうこん

元メカ設計者、現なんちゃってAIエンジニア。実験データを分析しているうちにプログラミングとAIのスキルを習得(?)職業何ですか?と聞かれたときに何と答えるべきかを考える日々。 Qiita: https://qiita.com/kamome885

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